日本を代表する観光地として人気の高い「京都」。かつて日本の都として栄えた京都は、修学旅行の行き先としても有名な場所です。歴史的な価値の高さから、京都には世界遺産も存在。日本の歴史を感じられるスポットとして、国内外を問わず多くの観光客が訪れます。
実は京都に存在する世界遺産の登録数と、登録されている神社や城の数は別物。今回は、そんな京都の世界遺産を紹介します。
京都の世界遺産
実は京都の世界遺産登録数は1つ?
京都の世界遺産登録数は1つだけ?
人気の観光地である京都には、多くの世界遺産が存在すると思う人もいるかもしれません。しかし、意外にも京都の世界遺産登録数は1つ。都道府県別の世界遺産数ランキング1位の奈良県には、3つの世界遺産があります。
「金閣寺や銀閣寺、清水寺は世界遺産のはずなのになぜ1つだけ?」と疑問を持った人もいるのではないでしょうか。京都の世界遺産登録数が1つなのは、それぞれのスポットが1つにまとめられて世界遺産に登録されているため。全部で17カ所の構成遺産が、「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されています。
古都京都の文化財とは?
古都京都の街並み
平安時代から江戸時代まで日本の首都が置かれていた京都。特にその文化は、日本の建築や造園、都市計画などの発展に大きな影響を与えてきました。また、建造物群が各時代の建築様式や庭園の代表例であり、自然と調和した景観は日本独自の精神や文化を表現しています。
これらが評価され、日本で5番目の世界遺産としての登録が決定。17カ所の寺社と城が、古都京都の文化財の構成遺産として登録されています。これらは3つの基準を元に選定されました。
1つ目は、建造物もしくは庭園であること。これは世界遺産が不動産に限られているためです。2つ目は、国内で最高ランクに位置付けられている国宝(建造物)か特別名勝(庭園)を有していること。そして3つ目は、遺産そのものの保護状況が優れていることです。
この3つの基準に沿って、平安遷都1200年を迎えた1994年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。日本ユネスコ協会連盟の表記では、「古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)」が正式名称。しかし、市の部分を省略した「古都京都の文化財」と呼ばれることの方が多いです。
世界遺産「古都京都の文化財」を構成する17の寺社と城
全部で17の寺社と城から成る世界遺産「古都京都の文化財」。それぞれのスポットに魅力があります。
金閣寺
京都を代表する世界遺産 金閣寺の舎利殿
金色の舎利殿が眩しく輝く世界遺産「金閣寺」。京都でも特に人気の観光スポットです。室町幕府第3代将軍の足利義満によって建立された寺院で、正式名称は「鹿苑寺(ろくおんじ)」。応仁の乱や1950年の舎利殿放火など多くの困難を経験しましたが、その度に再建されてきました。
舎利殿の豪華さのみならず、実は金閣寺は格式も最高位の寺院。京都に行く際には、真っ先に訪れたい観光名所です。
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清水寺
清水の舞台が有名な清水寺も京都の世界遺産
清水の舞台が有名な世界遺産「清水寺」。国宝や多くの重要文化財が存在し、創建から1200年以上の長い歴史を持つ寺院です。記録が残っているだけで、清水寺は9回も全焼に近い形で焼失。幾度となく再建を繰り返し、今では多くの観光客が足を運ぶ観光名所になっています。
音羽山に清らかに湧いていた滝は「音羽の滝」と呼ばれ、現在は多くのご利益がいただける京都のパワースポットとして人気。世界遺産には、清水寺から独立した「地主神社」も含まれています。
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仁和寺
京都の仁和寺では小室桜が咲き誇る
兼好法師の随筆「徒然草」にも登場する世界遺産「仁和寺(にんなじ)」。境内には五重塔や仁王門などの江戸時代に建てられた建造物が並んでいます。仁和寺は桜の名所としても人気のスポット。建造物ができたのと同時期に植えられた御室桜(おむろざくら)は4月中旬に見頃を迎え、当時と同じ姿で咲き誇ります。
仁和寺の五重塔は、各層の屋根の大きさがほぼ同じ。江戸時代の特徴を示す五重塔は、国の重要文化財に指定されています。
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二条城
大政奉還の舞台である二条城も京都の世界遺産
京都にある世界遺産の中で、唯一の城である「二条城」。大政奉還の舞台であり、江戸幕府の栄枯盛衰を見届けていきた場所です。
現存する御殿の中で唯一国宝に指定されている「二の丸御殿」は、歩くと音が鳴る「鶯張り(うぐいすばり)」で有名。多くの重要文化財を所有する二条城は、日本の100名城にも選ばれています。
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龍安寺
京都の世界遺産である龍安寺は枯山水が有名
枯山水(かれさんすい)の石庭が有名な世界遺産「龍安寺(りょうあんじ)」。石庭の石を島に見立て、白砂に線を描くことで水の流れを表現しています。
龍安寺の石庭の縦横比は、最も美しい比とされている黄金比。石庭の奥が低くなるように傾斜がつけられて奥行き感が生まれるなど、多くの工夫が施されています。
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銀閣寺
わびさびの文化が生まれた銀閣寺
「わびさび」の文化である東山文化が誕生した場所とされている世界遺産「銀閣寺」。正式名称は「慈照寺(じしょうじ)」で、金閣寺に対する建造物として銀閣寺と呼ばれるようになりました。
銀閣寺を建立したのは室町幕府第8代将軍の「足利義政」。金閣寺のような派手さはないものの、日本人特有の美意識が感じられる場所です。
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東寺
京都の東寺にある五重塔は日本一の高さを誇る
そびえ立つ五重塔が有名な世界遺産「東寺」。「教王護国寺」というのが正式名称で、嵯峨天皇(さがてんのう)が空海に与えた寺院と言われています。
東寺の五重塔は高さ約55mで日本一の高さを誇り、京都のランドマーク的な存在。京都駅から徒歩約15分ほどの距離にあるので、京都観光の最初や最後に訪れるのがおすすめです。
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西本願寺
京都の世界遺産である西本願寺の御影堂
浄土真宗の開祖「親鸞(しんらん)」の墓として建てられた世界遺産「西本願寺」。正式名称は「龍谷山本願寺」で、建立から700年以上の歴史があります。
本堂の「阿弥陀堂(あみだどう)」や「御影堂(みえいどう)」をはじめ、西本願寺は多くの国宝や重要文化財を所有。特に金閣寺や銀閣寺とともに京都三名閣とされている「飛雲閣(ひうんかく)」は、絶対に見逃せない存在です。
上賀茂神社
上賀茂神社は京都で最古の神社と言われている
京都で最も古い神社と言われている世界遺産「上賀茂神社(かみがもじんじゃ)」。厄除けや落雷除け、必勝のご利益がもらえると言われています。
上賀茂神社の名前が有名ですが、正式名称は「加茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)」。二の鳥居をくぐってすぐ目に飛び込んでくる円錐形の「立砂(たてずな)」は、お清めの塩の起源とも言われています。
下鴨神社
京都の下鴨神社は縁結びのパワースポットがある
京都の鴨川の下流に位置する世界遺産「下鴨神社」。上賀茂神社と併せて「賀茂神社」と総称されます。導きや勝利の神として信仰を集める神社で、正式名称は「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」。縁結びの神様である「産霊神(むすびのかみ)」を御祭神とする「相生社(あいおいのやしろ)」は、縁結びのパワースポットとして人気です。
西芳寺
京都の世界遺産である西芳寺は苔寺としても親しまれている
約120種類の苔が美しく境内を覆う世界遺産「西芳寺」。通称「苔寺」としても親しまれています。まるで緑のじゅうたんのように苔で覆い尽くされた美しい庭園は、特別名勝・史跡に指定されたスポット。応仁の乱の戦火でも保持され、金閣寺や銀閣寺といった、京都における後世の庭園に大きな影響を与えました。なお、参拝には事前申し込みが必須なのでお忘れなく。
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醍醐寺
醍醐寺は桜の醍醐としても有名
200万坪以上の広大な境内を有する世界遺産「醍醐寺(だいごじ)」。京都の醍醐山上一帯にあたる「上醍醐」と山麓の「下醍醐」、そして壮麗な庭を誇る「三宝院」に分けられます。
境内にある五重塔は、醍醐天皇の冥福を祈るために建立された京都府内最古の木造建築物。醍醐寺は「桜の醍醐」としても有名で、豊臣秀吉が植えたとされる約700本の桜とともに「醍醐の花見」を楽しめます。
天龍寺
京都の天龍寺にある曹源池庭園は日本で初めて特別名勝・史跡に指定された
足利将軍家と後醍醐天皇ゆかりの世界遺産「天龍寺」。京都五山の第1位とされており、紅葉と桜の名所です。
天龍寺の見どころは、庭園として日本初の特別名勝・史跡に指定された「曹源池庭園(そうげんちていえん)」。池の周囲を1周しながら鑑賞する「池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)」という庭園様式で、四季折々の美しさを楽しめます。
高山寺
京都の高山寺では静かな時間を過ごすことができる
京都市街地から離れた栂尾(とがのお)にある世界遺産「高山寺(こうさんじ)」。山奥に位置するため、街中とは比べものにならないほど静寂な時間が流れます。
高山寺には国宝の「鳥獣人物戯画」をはじめ多くの文化財が存在。境内は国の史跡に指定されており、栂尾は紅葉の名所として有名です。
平等院
10円玉にも描かれている平等院鳳凰堂
藤原氏ゆかりの世界遺産「平等院」。中でも鳳凰堂は10円玉に描かれており、国宝にも指定されています。実は鳳凰堂とは呼び名で、本来の名前は阿弥陀堂。正面から見た姿が翼を広げた鳥のように見えることと、屋根の上に1対の鳳凰が据えられているために鳳凰堂と呼ばれるようになりました。
平等院は藤の名所としても有名。樹齢約280年とも言われる藤の花は、4月下旬から5月上旬にかけて見頃を迎えます。
宇治上神社
宇治上神社は世界一小さい世界遺産とも呼ばれる
平等院の鎮守社である世界遺産「宇治上神社」。平安時代後期に造られた本殿は国宝に指定されており、現存する最古の神社建築とされています。宇治上神社は規模が小さいため、「世界一小さい世界遺産」と呼ばれることも。隣接している宇治神社とは対を成しているそうです。
延暦寺
京都の延暦寺にある阿弥陀堂と東塔は朱色に輝く
古都京都の文化財の中で、唯一敷地が京都以外にも広がっている世界遺産「延暦寺(えんりゃくじ)」。標高約850mの比叡山(ひえいざん)全域を境内とする寺院です。
延暦寺の敷地が滋賀にも及んでいるのは、比叡山が京都と滋賀の県境に位置するため。東には日本一の面積を誇る琵琶湖が見え、西には京都の街並みを一望することができます。
世界遺産と併せて訪れたい京都の観光名所
世界遺産を保有する京都には、他にも多くの見どころが存在します。京都を訪れた際には、世界遺産以外のスポットに足を運ぶのもおすすめ。ここでは、世界遺産と併せて訪れたい京都の観光名所を紹介します。
伏見稲荷大社
伏見稲荷大社は全国にある稲荷神社の総本宮
日本各地に存在する稲荷神社の総本宮である「伏見稲荷大社」。創建から1300年以上の歴史を持つ神社で、京都でも有数の観光名所です。伏見稲荷大社で特に有名なのが「千本鳥居」。美しい朱塗りの鳥居が連なっている光景は、見る人の心を奪います。
伏見稲荷大社でいただけるご利益は、商売繁盛や五穀豊穣、家内安全など種類がさまざま。「お稲荷さん」として、老若男女を問わず親しまれています。
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三十三間堂
三十三間堂には千体千手観音立像が安置されている
蓮華王院の本堂である「三十三間堂」。国宝の「千手観音坐像」と「千体千手観音立像」が安置されています。三十三という数字には意味があり、「人々を救済するために観音様が三十三の姿に変化する」というエピソードに基づいているそう。
三十三間堂自体も国宝に指定されており、京都を訪れたい際にはぜひ足を運びたいスポットです。
京都の世界遺産
今回は、京都の世界遺産を紹介しました。古き良き日本の文化が感じられる京都。一度は訪れたい世界遺産が存在し、地図を片手にそれぞれを巡りながら街を歩く楽しみ方もできます。
古都京都の文化財として世界遺産に登録されている17の寺社と城は、1回の旅行で制覇するのは困難。何度も京都を訪れ、あなたの肌でそれぞれの良さを感じてみてください。