数ある写真ジャンルの中でも、盛り上がりを見せつつあるのが飛行機撮影です。
世界中を結ぶ飛行機にロマンを感じる方も少なくないのではないでしょうか。
筆者も小学4年生の頃に飛行機に興味を持って以来、20年間にわたって飛行機撮影を趣味とし、さらに仕事として活動してきました。
本記事では筆者自身がこれまで足を運んだ中でも、美しい写真を撮影することができる日本各地の空港を厳選してご紹介していきます。
TOP写真:福岡空港から撮影したANAの機体(撮影:筆者)
撮影スポットは全国各地にあり
カメラや飛行機を使った旅行が身近な存在となった今、飛行機を撮影することを趣味にされる方がここ数年で大きく増えたと実感しています。
日本は飛行機を撮影するのに適した環境が整っている国です。全国各地の空港に展望デッキが設置されていたり、空港の周辺には公式の見学・撮影スポットが設けられていたりします。
そして特徴の違いから旅先を選ぶように、全国に点在する空港それぞれの景色や機体を写真に収めるべく、目当ての空港へ遠征することも人気のスタイルとなっています。
北海道・旭川空港近辺のRWY34エンド付近から撮影(写真:筆者)
沖縄・下地島空港近辺の17エンドから撮影(写真:筆者)
飛行機撮影に適している場所・撮影のコツは?
全国各地の空港で飛行機撮影を楽しむことができますが、まず飛行機を撮影するのに最適な条件を知っておくとよいでしょう。
「空港の展望デッキ」は気軽な撮影スポット
日本全国各地の空港では、大空港から小規模の空港まで大半の空港に展望デッキが設けられています。実はこれ、世界的には非常に珍しいことで、日本では空港ターミナルから気軽に飛行機を撮影することができます。
飛行機に乗る前に少しだけ撮影に挑戦してみる、といった気軽な撮影もできますので、旅のついでに飛行機撮影を始めてみるのもいいでしょう。
羽田空港の展望デッキ(写真:PIXTA)
迫力重視派には「空港周辺の公園や展望スペース」がおすすめ
空港によっては、空港周辺に公園や展望スペースが設けられていることもあります。
海上空港ではあまり存在しませんが、内陸に位置する多くの空港では、空港外から飛行機を眺められる場所が存在するため、撮影にもおすすめです。
このような公園や展望スペースは、離着陸する飛行機への距離がターミナルの展望デッキよりも近いことが多く、展望デッキとは異なる迫力ある写真を撮影したい場合におすすめです。
千葉県芝山町、成田空港近辺にある「ひこうきの丘」(写真:PIXTA)
「太陽の向きを意識」するのがコツ
飛行機を撮影する上で意識しておきたいのが、時間帯における太陽の向きです。
基本的に飛行機は太陽の光が機体の側面に当たる、いわゆる順光と呼ばれる状態が理想的ですが、時間によって太陽は動くので、数ある撮影スポットでもどの時間帯が順光になるのか確認しておくことも大切です。
あえて逆光で狙うことも写真表現のひとつですが、いずれにしても1日の中で太陽がどのような動きをして、どのような光が機体に当たるのかは確認しておくのがよいでしょう。
光の当たり方による写真の違い。左が順光、右が逆光(写真:筆者)
美しい写真が撮れる空港9選
羽田空港(東京都)
第1ターミナル展望デッキより。夕焼けの時間帯は第1ターミナル展望デッキにおける特におすすめの時間帯です(写真:筆者)
首都・東京に位置し、日本を代表する空港でもある羽田空港は、飛行機撮影にもおすすめの空港です。存在する3つのターミナル全てに展望デッキが存在し、それぞれに異なる特徴があります。
第1ターミナルからは、富士山と絡めた写真を撮影することができます。順光になる朝、または逆光となる夕暮れの時間帯が「富士山×飛行機」の撮影におすすめです。
第3ターミナルP5駐車場より(写真:筆者)
第2ターミナルからは、東京湾を一望することができ、海を背景にした写真を撮影することができます。少し向きを変えることで東京スカイツリーと絡めたカットも撮影することができる、午後順光がおすすめスポットです。
第3ターミナルは、国際線が発着するターミナルということで、世界各国様々な航空会社が見られる国際色の豊かさが魅力です。
このほか、空港周辺のターミナル以外にも撮影ポイントは点在しており、「羽田イノベーションシティ」の足湯デッキ、浮島町公園、京浜島つばさ公園、城南島海浜公園などがおすすめ撮影スポットになります。
成田空港(千葉県)
第1ターミナル展望デッキより(写真:筆者)
東京エリアでもうひとつの主要空港といえば成田空港です。
近年、羽田空港にも国際線が就航するようになりましたが、国際線の路線数が現在も日本一なのが成田空港で、羽田空港でも見られない航空会社が多数就航する空港です。(2024年1月時点)
第1ターミナルと第2ターミナルには展望デッキが存在し、午前中は第1ターミナル、午後は第2ターミナルと、1日をターミナルで過ごすことも可能です。
しかし、成田空港での撮影は、空港外周撮影スポットが大変魅力的で、「さくらの山公園」「ひこうきの丘」「十余三東雲の丘」といった公式撮影スポットも充実しています。
年中通して撮影を楽しむことのできる空港ですが、成田空港において特におすすめの季節が「桜」が咲く季節になります。
第1ターミナル展望デッキより撮影。桜の季節には背景に桜が写ります(写真:筆者)
「さくらの山公園」や「さくらの丘公園」では、桜と飛行機を絡めた写真を撮影することのできる数少ない貴重なスポットとして人気です。
伊丹空港(大阪府)
千里川土手より滑走路方向を撮影(写真:筆者)
関西地区において国際線の拠点空港となるのが大阪国際空港(伊丹空港)です。
大空港とは思えない市街地に立地した空港で、飛行機まで近づいて迫力ある写真を撮影することができます。そのため、飛行機撮影では特に人気のある空港です。
ターミナルには展望デッキも存在しますが、伊丹空港での撮影を楽しむのであれば空港外周スポットが特におすすめ。「伊丹スカイパーク」では、滑走路上を離着陸する機体を横から綺麗に撮影することができる定番スポットです。
もうひとつ訪れておきたいのが「千里川土手」で、こちらは滑走路の延長線上に存在するポイントであることから、着陸する機体が真上をスレスレで飛んでくる迫力あるカットを撮影することができます。
千里川土手より(写真:筆者)
また、夜になるときらびやかな空港の灯火類と背景に映る宝塚の夜景が見事にマッチし、夜景撮影の地としてもおすすめです。
福岡空港(福岡県)
アクシオン福岡の裏山より(写真:筆者)
九州最大の空港である福岡空港も撮影におすすめの空港です。
先ほどの伊丹空港同様、市街地に位置する空港であることから、豊富な便数ながら非常にコンパクトで外周撮影ポイントも充実している空港です。
2020年には、旅客ターミナルのリニューアルも行われ、それに伴って新たな展望デッキが誕生しました。福岡空港の展望デッキは、日本一の展望デッキと呼べるほどの環境を叶えており、飛行機まで手が届きそうな距離が魅力です。
国内線ターミナル展望デッキより至近距離でJALのA350-900を撮影(写真:筆者)
太陽が機体に当たる順光の時間は午前中となりますが、夜間の撮影もおすすめ。ぜひ三脚を持参して夜景の撮影を行ってみてはいかがでしょうか。
新千歳空港(北海道)
生コンポイントより朝一東京に向けて離陸するJALのA350-900(写真:筆者)
北の大地・北海道最大の空港である新千歳空港は雪景色が大きな魅力の空港です。
例年12月から1月にかけて積雪シーズンとなり、ほかの地域ではなかなか見ることのできない「飛行機×雪景色」を気軽に楽しむことのできます。
冬季は展望デッキが閉鎖されてしまいますが、フードコートの窓ガラス越しに撮影できるほか、「生コンポイント」「A10ポイント」(要レンタカー)といった外周の撮影スポットも充実しています。
G誘導路ポイントよりRWY01Lへとタキシングする機体を撮影(写真:筆者)
豊富な便数も存在することから、行くだけで様々な機体をコレクションすることができるのもおすすめポイントです。
旭川空港(北海道)
RWY34エンド付近より秋の紅葉の時期に撮影(写真:筆者)
北海道の道央に位置し、豪雪地帯に入る旭川空港も撮影にはおすすめの空港です。
就航する便数は地方空港だけあって1日に数えられるほどですが、旭川空港の魅力は何といってもの空港周辺の絶景。
有名観光地である美瑛エリアの近くであることから、日本とは思えない大自然が広がり、その中に飛行機が溶け込むような写真を撮影することができます。
美瑛エリアより望遠レンズを使用して撮影(写真:筆者)
東京(羽田)線を運航するJALとAIRDOでは、地方路線としては大型の機体となる767-300ERを投入しており、機体の存在感も魅力的です。
春や夏は豊かな緑、秋は冠雪した紅葉の山、冬は辺り一面を覆う銀世界、と四季折々の景色を楽しむことのできる日本屈指の絶景空港です。
高松空港(香川県)
さぬきこどもの国より(写真:筆者)
四国の香川県の玄関口である高松空港は、市街地から離れているものの、撮影には優れた環境が整っています。
空港ターミナルには展望デッキが存在しますが、展望デッキは冬になると終日逆光の状態となるため、飛行機撮影には空港南側に位置する「さぬきこどもの国」がおすすめです。
「さぬきこどもの国」には、季節に応じて様々な植物が植えられることで有名で、花と飛行機のコラボレーションを撮影することができます。
冬から春に移り変わるタイミングでは菜の花が一面に咲き誇ります。菜の花は背の高さがあるので、前ボケとして入れるなど様々な工夫を凝らした写真の撮影することができます。
空港付近に花畑が存在する空港は珍しく、花と飛行機のコラボを撮影したい方は高松空港が日本屈指の環境となります。
那覇空港(沖縄県)
瀬長島ウミカジテラスより(写真:筆者)
沖縄エリアで最大の空港となる那覇空港でも飛行機の撮影を楽しむことができます。
ターミナルには展望デッキが存在しますが、それよりもおすすめなのが4階に位置するガラス張りのスペースです。機体の位置によっては、出発の際の牽引により、機体が眼下まで接近するため、ほかの空港では撮影することのできない特殊なアングルで撮影することができます。
このほかには、外周撮影ポイントとして瀬長島(せながじま)がおすすめで、現在はウミカジテラスなど観光開発も行われおり、バスなど公共交通機関でも行きやすい場所になりました。
瀬長島は、午前中に西側の滑走路へと着陸する機体を眺めるのに最適な場所。着陸機の下には珊瑚礁が広がっており、やや引き気味で海と絡めたカットの撮影が人気のスポットです。
下地島空港(沖縄県)
17エンドより(写真:筆者)
南国らしい写真を撮影するなら下地島空港に一度は訪れることがおすすめです。
宮古諸島に位置する下地島空港は、元々パイロットの訓練用空港として建設され、訓練があるときしか飛行機の離発着を見ることができませんでしたが、最近ではジェットスター・ジャパンとスカイマークによる定期便が就航。毎日飛行機を見られる空港になりました。
下地島空港において最もおすすめな撮影スポットが空港北側に位置する「17エンド」です。一面に広がるエメラルドグリーンの珊瑚礁が非常に美しく、その上を着陸する機体が通過する絶景が広がっています。
17エンドの上を着陸機が通過するのは、南風運用時のみのため、基本的には夏場に訪れることがおすすめです。
おわりに:日本各地で撮影できる絶景飛行機写真
今回ご紹介してきたように、日本各地には絶景と飛行機を絡めて撮影できる空港がたくさん存在します。
筆者自身、これまで世界各国で飛行機の撮影を経験していますが、これほど同じ国の中で異なる情景や季節による変化を味わえるのは日本だけと言い切れるほどです。
ぜひ本記事をご覧になった方は、地元の空港だけでなく、日本各地の゙様々な空港へと撮影遠征をして、地元では撮れない美しい飛行機写真を撮影されてみてはいかがでしょうか。
Text&Photo:芳岡淳(Atsushi Yoshioka)
1994年生まれ。神奈川県横浜市出身。小学生の頃、旅客機に興味を持ったのをきっかけに写真撮影をスタート。海外撮影も得意としており、世界中で撮影した作品を展開しながら、各専門誌、WEBメディアにてフォトグラファー&ライターとして活躍中。
Edit:Erika Nagumo